中東・北アフリカ地域

WB_AR2009_photoimage
WB_AR2009_Map Middle East and North Africa

  • アルジェリア
  • ジブチ
  • エジプト・アラブ共和国
  • イラン・イスラム共和国
  • イラク
  • ヨルダン
  • レバノン
  • リビア
  • モロッコ
  • シリア・アラブ共和国
  • チュニジア
  • イエメン共和国

この項ではヨルダン川西岸・ガザ地区についても報告する。

中東・北アフリカ地域もまた、世界経済危機の打撃を受けています。2009年の実質国内総生産(GDP)成長率は2.2%の見通しです(2008年は6.2%、2000-07年は平均5.1%)。食糧・燃料価格の高騰が消費者物価の上昇を煽り、2007年の7.2%から2008年には10.6%となりました。

当地域の銀行や投資会社は、サブプライム関連のモーゲージ担保証券を大量には保有しておらず、湾岸諸国の多くが、2008年後半に起きた短期資金の大量流出の影響を吸収するに十分な資金力を有していました。しかし、世界金融危機は当地域の金融見通しに影響を与えました。国債スプレッドは拡大し、域内の株式市場は大幅に下落し、外国直接投資の流れは減退する見通しであり、輸出収入および観光・貿易関連サービスは減少し、国外からの送金は縮小すると予想されています。

世界金融危機の実際の影響は、地域内でも様々に異なると考えられます。湾岸協力会議(GCC)加盟国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアおよびアラブ首長国連邦)は危機が発生した際、極めて良好な財政および対外収支バランス、または原油価格高騰時の収入により築いた十分な資金準備を備えていたおかげで、世界経済危機を乗り切るために最も有利な立場にありました。しかし、原油価格がさらに下落したり、不動産危機が深刻化するようなことがあれば、こうした国々でさえ、準備金を取り崩し投資を縮小せざるを得なくなる可能性があります。

アルジェリア、イラン・イスラム共和国、イラク、リビア、シリア・アラブ共和国およびイエメン共和国など人口の多い石油輸出国は、危機が発生した際に、財政・経常収支バランスが湾岸協力会議加盟国よりも脆弱でした。こうした国々は補助金などの社会分野で大きなコミットメントをしているため、景気後退時の歳出削減が困難になっています。ジブチ、ヨルダンおよびレバノンなどの、湾岸諸国と経済的に結びついた非石油輸出国では、観光、国外からの送金および湾岸諸国からの直接投資が減少すると考えられます。さらに、国外への出稼ぎ労働者が帰国することで、社会的摩擦が増大する可能性もあります。ヨーロッパと深い交易関係を持つ国々(エジプト、モロッコおよびチュニジア)は、ヨーロッパの需要後退が輸出、観光、国外からの送金、外国直接投資、そして恐らくは国外からの援助をも減少させるため、当地域の他の国々よりも危機の被害は大きくなるでしょう。輸出業界における失業が、人々の争いを拡大させる可能性もあります。以前、これらの国々は経常収支赤字を補填するため国際金融市場を利用しましたが、これは現在の状況では難しいかもしれません。

世銀の支援

世銀は2009年度、中東・北アフリカ地域に対し17億ドルの拠出を承認しました。うち16億ドルがIBRDの貸出、1億7200万ドルがIDAによる承認(1億2900万ドルの贈与を含む)でした。こうした増加は、ひとつには食糧、原油および金融危機への対応によるものでした。

また、世銀は、37件の経済・セクター分析および74件の融資を伴わない技術協力活動を実施しました。これらの活動には、民間セクター開発に関する地域主要報告書および移民に関する地域レポート、リビアおよびイエメン共和国の公共支出調査、およびいくつかのガバナンス関連レポートが含まれます。アラブ世界イニシアティブとの関連でも、地域インフラから教育・知識共有まで多様な分野にわたるいくつかの報告書が発行されました。(囲み1.5参照

インフラのボトルネック解消

世界的景気後退に関連する喫緊のニーズに対応する一方、2009年度における世銀のプログラムは、世銀が引き続き長期的成長を重視していることを反映し、エジプト、ヨルダン、レバノンおよびモロッコに対し、大規模なインフラプロジェクトが承認されました。理事会はエジプトに対し、アイン・ソフナ電力プロジェクトに6億ドル、エジプト鉄道の再建に2億7000万ドルと、2件の大型融資を承認しました。レバノンに対する7000万ドルの都市交通整備プロジェクト、およびヨルダンに対する3300万ドルのアンマン開発回廊プロジェクトは、交通ボトルネックの解消と、将来における持続的成長への道筋をつけることに力を注いでいます。

民間セクター開発、競争力およびガバナンスの強化

中東・北アフリカ地域は、グローバリゼーションによってもたらされた社会的問題への対処と競争力強化の課題という、2つの課題を両立させる困難に直面しています。世銀は、チュニジアに対し、グローバル市場への統合を進めるために2億5000万ドルの融資を行いました。モロッコでは、世銀は、良いガバナンスのアジェンダを促進する一方で安定と持続的成長を可能にする環境創出の取り組みを支援しています。

当地域のビジネス環境は改善しつつあります。2008年度末には、域内諸国の3分の2が、27件という目覚ましい数の改革を導入しました。昨年当地域で一位にランクされたエジプトは、過去4年間で3度、世界で最も改革が進んだ上位10か国に入っています。他にも、ジブチ、ヨルダン、レバノン、モロッコ、オマーン、サウジアラビア、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、ヨルダン川西岸・ガザ地区、およびイエメン共和国などの国々が、改革を促進しました。

若年層の教育

中東・北アフリカ地域の教育セクターにおける課題は、当地域の若者がグローバル経済の中で競争していけるように、質の高い教育を提供することです。ヨルダンにおける2500万ドルの「知識経済に向けた高等教育改革プロジェクト」は、品質とガバナンスの問題に重点を置いており、6000万ドルの「第二次知識経済に向けた高等教育改革プロジェクト」は、これらの課題を踏まえて、高等教育以前の段階の教育機関で学ぶ学生に対し、知識経済に参画するためのより高度なスキルを提供する必要性を重視しています。

紛争経験国の国民に対する支援

世銀は2009年度のガザ紛争に迅速に対応し、停戦から1週間以内に評価チームを派遣しました。評価チームが作業の結果として提出した勧告の中心部分は、復旧・復興作業は、ガザにおける現行の開発と密接に連携すべきというものでした。これは、実務的には、上下水設備、電力、社会的セーフティネット、地方開発、および非政府組織からの支援 など、いくつかの主要分野において成果を上げている様々な援助案件に継続的な資金提供を行い、それらを拡大することを意味しています。2009年4月には、投資の可能性について協議し、健全なビジネス環境の創出を支援するため、世銀グループの代表団がイラクを訪問しました。

女性を経済の中心に据える取り組み

世銀は2009年度を通じ、中東・北アフリカ地域において様々なジェンダー研究およびプログラムを開始または実施しました。エジプトでは、労働市場へのアクセスおよび制約のジェンダー的側面に関する評価を実施しました。ヨルダンでは、コミュニティ・カレッジを卒業した若い女性の労働市場へのアクセス促進を目的としたプログラムを計画しています。サウジアラビアでは、女性が家長である家庭の調査を行っている、ジェッダやメディナの「都市観測所」に支援を行っています。イエメン共和国では、保健および教育セクターへの公共支出に関するジェンダー分析を準備しています。また、世銀は、制度開発基金グラントを通じ、国家の政策や戦略がジェンダーの平等に与える影響を測定するプログラムを支援しています。

世銀はレバノンにおけるジェンダー評価を実施し、モロッコではジェンダー予算の作成に関するワークショップを開催しました。また、世銀は、隔年ベースの報告書「中東・北アフリカ地域における女性の現状および発展(Status and Progress of Women in the Middle East and North Africa )」を発行し、経済への参画、教育アクセス、医療へのアクセス、公的参画・意見表明および法的権利に関する進展を検証しました。

人材育成・技術協力などのプログラムの拡大

有料プログラムを要請している中東・北アフリカ諸国の数は、2009年度に11か国へと増加しました。こうしたプログラムからの総収入は約1100万ドルとなり、2010年度も安定した需要が見込まれます。湾岸諸国との戦略協調プログラムには、バーレーン、湾岸協力会議事務局、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアおよびアラブ首長国連邦におけるプログラムとサービスがあります。こうしたプログラムは、より戦略的かつ多年度にわたるものとなり、その規模は2009年度に600万ドル近くに達し、2010年度もほぼ同額となる見込みです。

貿易金融の拡大および外国直接投資の保証

IFCは2009年度、貿易金融プログラム、民間投資家への技術協力、助言サービスを拡大しました。多数国間投資保証機関(MIGA)もまた、中東・北アフリカ地域の借入国への外国直接投資を確保するため、自らの保証制度の利用を計画しています。

また、世銀は2009年度、アラブおよびイスラムの開発機関とのパートナーシップを強化しました。世銀はこれらの機関と、水および人間開発セクターにおけるセクター・ワイド・アプローチの設計および実施方法に関する経験を共有し、プロジェクト発掘、審査、監理およびモニタリング・評価に関する技術的ワークショップおよび対話を実施し、プロジェクトを発掘、審査、監理するための共同ミッションを行いました(http://www.worldbank.org/mna参照)。

図2.11
中東・北アフリカ地域
IBRDとIDAのテーマ別融資|2009年度
総融資額17億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Europe and Central Asia IBRD and IDA Lending by Theme Fiscal 2009

図2.12
中東・北アフリカ地域
IBRDとIDAのセクター別融資|2009年度
総融資額17億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Europe and Central Asia IBRD and IDA Lending by Sector Fiscal 2009

表 2.6

中東・北アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2004 ~ 2009年度

単位:100万ドル

テーマ 2004 2005 2006 2007 2008 2009
経済管理 0.0 45.8 0.0 0.0 0.0 0.0
環境・天然資源管理 113.8 160.2 44.5 179.7 65.0 149.3
金融・民間セクター開発 259.3 166.6 907.8 166.7 778.0 371.0
人間開発 192.1 95.4 128.5 14.3 17.2 92.0
公共セクター・ガバナンス 19.6 166.0 229.0 59.8 208.0 17.5
法規 1.7 1.8 46.9 33.0 11.2 0.0
農村開発 65.1 155.3 177.9 126.6 53.3 82.3
社会開発・ジェンダー・参加 70.7 123.0 67.8 174.9 75.5 21.0
社会的保護・リスク管理 31.6 98.5 69.7 15.4 35.7 32.9
貿易・統合 158.3 0.0 0.0 16.0 17.2 201.4
都市開発 178.7 271.1 28.5 121.6 208.8 755.7
テーマ総額 1,091.0 1,283.6 1,700.6 907.9 1,469.8 1,723.0
セクター
農業・漁業・林業 27.2 229.2 15.3 208.5 0.0 60.0
教育 154.9 124.0 146.8 14.3 32.0 68.0
エネルギー・鉱業 0.0 0.0 316.5 291.6 280.0 675.8
金融 20.8 142.5 625.0 39.2 500.3 50.0
保健・その他の社会サービス 52.0 0.3 0.0 84.3 27.3 6.3
産業・貿易 23.4 277.9 14.0 10.3 29.4 200.0
情報・通信 0.0 18.5 0.0 0.0 9.0 0.0
法律・司法・行政 93.6 232.9 249.2 61.9 189.6 75.7
運輸 409.6 29.0 237.6 27.4 104.7 390.1
上下水道・治水 309.5 229.3 96.4 170.5 297.6 197.2
セクター総額 1,091.0 1,283.6 1,700.6 907.9 1,469.8 1,723.0
うち、IBRD 946.0 1,212.1 1,333.6 691.9 1,202.5 1,551.0
IDA 145.0 71.5 367.0 216.0 267.3 172.0

注:2005年度からは、保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。

注目すべき成果現場の声

イエメン共和国の洪水被害への即時対応

2008年10月、ハドラムートおよびアル・マハラ地方の住民たちは、過去10年超の間にイエメン共和国で起きた中で最悪の洪水を経験しました。何十人もの人々が命を落とし、約2万5000人が家を失いました。

この洪水は、農地および人々の生活に破壊的な打撃を与えました。50万人を超えるイエメン人が財産または収入の実に多くを失いました。家畜被害は3万6000頭(ラクダ、山羊および乳牛)を超え、有名なハドラムートの蜂蜜を生み出していた蜜蜂についても約6万の巣箱が破壊されたと報告されています。1万3000エーカー近い農地が土壌浸食により甚大な被害を受け、約50万本の椰子の木が根こそぎ倒れたと報告されています。

洪水の影響に関する迅速な分析から4カ月後に、理事会は、道路アクセスの復旧および地方レベルにおける災害準備態勢/軽減/対応の能力強化を目的として、ハドラムートおよびアル・マハラの被災地における主要インフラ設備の復旧を支援するため、3500万ドルの追加資金拠出を承認しました。

中東・北アフリカ地域の概要

総人口:3億人
人口増加率:1.8%
平均寿命:70歳
乳幼児死亡率(出生1000件当たり):32件
若い女性の識字率:86%
HIV感染者・エイズ患者数:21万人
2008年の一人当たり国民総所得(GNI):3,242ドル
一人当たりGDP指数(1998=100)128

注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生1000件当たり)、若い女性の識字率、HIV感染者・エイズ患者数は2007年、その他の指標は2008年の「世界開発指標」データベース、HIV感染者・エイズのデータは国連・世界保健機関「2008年エイズ流行に関する報告書」の数字です。

2009年度の
新規融資承認額
2009年度の
融資実行額
IBRD:15億5100万ドル
IDA:1億7200万ドル
IBRD:12億1600万ドル
IDA:1億8300万ドル

2009年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ:70億ドル