ラテンアメリカ・カリブ海地域

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WB_AR2009_Map Latin America and Caribbean

  • アンティグア・バーブーダ
  • アルゼンチン
  • ベリーズ
  • ボリビア多民族国
  • ブラジル
  • チリ
  • コロンビア
  • コスタリカ
  • ドミニカ国
  • ドミニカ共和国
  • エクアドル
  • エルサルバドル
  • グレナダ
  • グアテマラ
  • ガイアナ
  • ハイチ
  • ホンジュラス
  • ジャマイカ
  • メキシコ
  • ニカラグア
  • パナマ
  • パラグアイ
  • ペルー
  • セントクリストファー・ネーヴィス
  • セントルシア
  • セントビンセントおよびグレナディーン諸島
  • スリナム
  • トリニダード・トバゴ
  • ウルグアイ
  • ベネズエラ・ボリバル共和国

ラテンアメリカ・カリブ海地域において、平均成長率5.3%を記録した5年にわたる堅調な経済成長は、世界金融危機により突如中断されました。2008年の成長率は4.3%ですが、2009年には約2%縮小し、その後2010年になって2.4%に回復する見通しです。

域内の多くの国々は今回の危機が発生した際、主に好景気の期間の堅実な財政政策およびマクロ経済面の脆弱性解消により、比較的有利な状況にありました。一部のラテンアメリカ諸国において2001-02年の金融危機勃発の後、金融規制・監督を強化していた結果、当地域は、国内の銀行業界が危機に陥ることが一例もなく、今般の危機を乗り切ってきています。

ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、2002年から2008年の間に6000万人の人々を貧困から救い出すことに成功しましたが、現在、この流れが逆転する危険にさらされています。世銀の推定では、今回の世界経済の混乱によって、2009年末までに域内で400万-600万人が貧困層(1日あたり所得が4ドル未満)に転落する可能性があります。 経済が米国と密接に結びついているメキシコおよび中米・カリブ諸国は、長引く不況の被害を最も強く受けると考えられます。例えばメキシコでは、2009年はマイナス成長になると考えられます。当地域への国外からの送金は激減し、特にメキシコおよび中米・カリブ諸国では、2008年の実質ベース減少率が6%となり、2009年には10%減も予想されるなど、悪影響が特に深刻です。南アメリカでは、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイおよびウルグアイも影響を受けています。一方、エクアドルやベネズエラ・ボリバル共和国のような石油輸出国は、国際原油価格の急落を受け、歳出を削減しています。

好景気の間に貯蓄を増やした国々、および多様な市場やアジア各国との関係が強い国々(ブラジル、チリ、コロンビアおよびペルー)は、他の国に較べ影響が軽微にとどまっています。全体として、最も良い状況にある国々は、独立した中央銀行、変動為替相場制、インフレ目標政策、および堅実な財政プロセスを採用した国々でした。

世銀の支援

世銀は2009年度、世界的危機への対応として、ラテンアメリカ・カリブ海に対する支援を飛躍的に拡大しました。世銀は、通常貸付額の3倍近くにあたる140億ドルの新規融資を承認しました。うちIBRD融資は138億ドル、IDA融資承認は2億250万ドルでした。借入額が大きかった国は、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンで、資金が最も多く投入されたセクターは、保健・社会サービス、公共行政・法律、上下水道でした。2009年度中の当地域への支援は、IBRD融資の42%、IBRD/IDA融資合計額では約3分の1を占めています。

世銀は当地域の借入国に対し、貧困、機会均等など、気候変動および競争力など幾つかの論点に関する革新的な金融・知識商品を提供しています。世銀とアルゼンチンおよびブラジルの機関の研究者が共同開発した新たな人間機会指数は、個別の国々の環境が、飲料水、下水道、電力、基礎教育などの基本的サービスへのアクセスをいかにして可能にしたり妨げたりするかを示しています。これは、当地域に暮らすすべての人々の機会拡大に焦点を当てた公共政策を主要な対象とする、全く新しい研究分野を拓くものです。

中所得国のニーズへの対応

世銀は、域内各国で益々多様化するニーズに対応するため、地域戦略をカスタマイズしました。中所得国に対して世銀は、分析・助言、新しい金融商品および技術協力を含む総合的サービス・パッケージを提供します。

繰延引出オプションとして知られる承認済み与信枠は、幾つかの国で役立ちました。2009年度に8件の繰延引出オプション付融資が、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ペルーおよびウルグアイの5か国に対して承認され、ショックの際に流動性を確保するために即時利用可能な財源として提供されました。この新しい融資手段は、資金供給の予防的財源を作ることで、各国政府が市場に前向きなシグナルを送ることができるよう支援するという、世銀のコミットメントを反映したものです。

アルゼンチン、ブラジル、メキシコなどの現G-20加盟国は、グローバルなプレーヤーになりました。こうした国々の開発課題により適切に対応するために、世銀は幾つかの革新的プログラムを導入しました。例えば2009年度、世銀は、ブラジルの持続可能な環境管理に対し13億ドルの融資、メキシコにおける低所得層の住宅アクセス拡大の取り組みへの支援として10億ドル、やはりメキシコの環境持続可能性に配慮した開発政策プロジェクトに対し4億100万ドルの融資、ペルーの新しい環境省の強化および主要経済セクターにおける環境管理の改善のために3億3000万ドルの融資、そしてウルグアイにおける政府の改革プログラム支援および世界経済危機の影響への対応の追加資金として4億ドルの融資を承認しました。

新型インフルエンザ(H1N1)の大流行への対応

世銀は、新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスの流行を阻止しようとするメキシコの取り組みを支援するために、2009年度分として2500万ドル、2010年度への準備金として4000万ドルを承認しました。

世銀はアルゼンチン、ベリーズ、コスタリカ、ドミニカ共和国、ホンジュラスおよびニカラグアなど域内の国々に対し、新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスの影響を軽減するための直接支援を提供しました。

最貧困国に対する援助

IDAは2009年度、ラテンアメリカ・カリブ海地域の最貧困国に対する援助として2億250万ドルを拠出し、5か国に対して無利子融資およびグラントを提供しました。ボリビアは、国内の特定の小区域に住む貧しい農民の市場アクセス改善を目的とする地方連携プロジェクトに対し、3000万ドルの財政支援を受けました。合計2500万ドルの贈与を受けた2件のプロジェクトが、2008年8月および9月にこの国を襲ったハリケーンと熱帯性低気圧により破壊・損壊されたハイチのインフラ再建に充てられるため、承認されました。ホンジュラスは食糧危機対応のため、1000万ドルの無利子融資を受けました。ニカラグア当局は、上下水道サービス改善のため、グラントと融資で合計4000万ドルの財政支援を受けました。

2009年6月30日、ハイチは、IDAおよびIMFの理事会の承認を受けた拡充重債務貧困国(HIPC)イニシアティブに定める完了時点に到達したことで、12億ドルの債務削減を受けました。ハイチは、HIPCイニシアティブの完了時点に到達した26番目の国となりました。債務返済免除は、HIPCイニシアティブ(2億6500万ドル)および多国間債務救済イニシアティブ(9億7270万ドル)によるものでした。

ビジネス環境の改善

当地域の危機後に向けた準備に対する支援の一環として、世銀は、ビジネス・投資環境の改善を図っている国々を支援しています。既にかなりの成果が見られており、ヨーロッパ・中央アジアは5年連続でビジネス規制改革が世界で最も進んだ地域となっています。2007年6月から2008年6月までに、域内25か国のうち23か国で、ビジネス環境を改善する62の改革が実施されました。規制改革を最も進めた10か国のうち4か国が、ヨーロッパ・中央アジアにありました。世界で最も規制改革を進めた国としてアゼルバイジャンは、ビジネス環境の世界ランキングにおいて97位から33位に躍進しました。規制改革で第2位だったアルバニアは、4つの分野で改革を実施し、世界ランキングを135位から86位に上げました。

このセクターへ資源を投入しようとする国々を支援するため、理事会は2009年度、中小企業の資金調達アクセスを拡大するため、トルコに対し2億ドル、アルメニアに対し5000万ドルの追加拠出を承認しました。また、理事会は、ビジネス環境改善に向けた取り組みを含むセルビア政府の構造改革プログラムを支援するため、5000万ドルの活動を承認しました。2009年度、タジキスタンに対し承認された2000万ドルの第三次プログラム的開発政策グラントは、民間セクター開発環境、公共セクター全般の機能、および主要な公共サービスの提供を改善する政府の取り組みを支援しています。

金融危機時における条件付現金給付プログラムの拡大

ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、子供や若者が定期健康診断を受け学校に通うことができるよう各家庭に給付金を支給する条件付現金給付プログラムをほかの地域に先駆けて導入しました。ブラジルのBolsa Família (家族のバッグ)やメキシコのOportunidades (機会)に類似したプログラムが、コロンビア、エルサルバドル、ジャマイカおよびパナマでも開始されました。当地域での条件付現金給付プログラムは、2009年度に世銀が供給した25億ドル近くの資金により拡大し、世界的危機の影響を最も受けやすい人々を保護する手段として用いられました。

新たな国別パートナーシップ戦略作り

理事会は2009年度、アルゼンチン、コスタリカ、ドミニカ共和国、グアテマラ、ガイアナ、ハイチおよびパラグアイなどラテンアメリカ・カリブ海地域諸国に対する、幾つかの国別パートナーシップ戦略を承認しました。2008年度に承認されたブラジルおよびメキシコの国別戦略は、環境保護や社会セーフティネット・プログラム支援などの主要開発分野で成果を上げ始めました。

2009年3月、ベリーズに対する2カ年暫定戦略が承認されました。これは、この国に世銀が再び関与し始めたことを示すものです。2009年6月には、ボリビア多民族国に対しても新たな暫定戦略が承認されました。

競争力の向上および成果主義マネジメント

世銀は、国家システムの強化、サービス提供に関する説明責任の向上、そして結果に対するモニタリングおよび評価を通じ、良いガバナンスおよび透明性を促進するための効果的・持続的方法を開発する各国の取り組みを支援しています。

こうした成果を達成するため、世銀は、ブラジルのペルナンブコ教育成果および説明責任プロジェクトに対し、1億5400万ドルを拠出しました。このプロジェクトは、同地域における以前のプロジェクトの成功を踏まえたものであり、公教育の品質、効率性および公平性の向上と子供の識字率向上を目的としています。パナマでは、民間セクターの競争力強化、財政規律の確立および公共セクターの説明責任向上を図る政府の取り組みを継続的に支援しており、1億ドルの新規融資を行いました。

世界的気候変動解決策の一環としてのラテンアメリカ

2008年12月、世銀は当地域に関する主要年次報告書として、「低炭素・高成長:気候変動に対するラテンアメリカの対応(Low Carbon,High Growth: Latin American Responses to ClimateChange)」を発表しました。この報告書は、ラテンアメリカのエネルギー資源からの排出量は世界全体のわずか6%であり、世界の他地域よりクリーンエネルギー源を使っているとしています。当地域は豊富な水力発電量を擁し、他の地域に比べ石炭への依存度がかなり低く、持続可能な運輸システムに関して世界をリードしています。同報告書は、当地域が、森林破壊による排出の削減、水力発電開発の行き詰まりの打破、エネルギー効率の向上および都市運輸システムの転換において中所得国を主導する立場にあると結論付けています。

地域的活動

2009年4月の春季会合に合わせ、ラテンアメリカ・カリブ海地域諸国は金融危機に関するセミナーを開催しました。世銀春季会合の代表団の一部も参加したこのセミナーでは、エルサルバドルのマウリシオ・フネス新大統領が基調演説を行いました。

2008年11月、100名を越える西半球のベテラン議員および主要なエネルギー会社の経営者たちが、メキシコで会合を開きました。参加者は、世界金融危機を解決する取り組みは経済的に持続可能で、かつ2050年までに温室効果ガス排出量を1990年の水準から80%削減するために役立つものでなければならない旨で合意しました。メキシコ議会が主催し、世銀および地球環境国際議員連盟(GLOBE)が共同スポンサーとなったこの会合は、南北アメリカ大陸の議員が、特に気候変動対応策につき協議し合意するために集まった、初の会合でした。

2008年10月、メキシコ財務省と世銀は、当地域の財務分野の広報担当者を対象とする初のフォーラムを開催しました。メキシコで始まった対話および情報交換を今後も継続していく場を財務分野の広報担当者たちに提供するため、ウェブベースのプラットフォームが構築されました(http://www.worldbank.org/lac参照)。

図2.9
ラテンアメリカ・カリブ海地域
IBRDとIDAのテーマ別融資|2009年度
総融資額140億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Latin America and Caribbean IBRD and IDA Lending by Theme Fiscal 2009

図2.10
ラテンアメリカ・カリブ海地域
IBRDとIDAのセクター別融資|2009年度
総融資額140億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Latin America and Caribbean IBRD and IDA Lending by Sector Fiscal 2009

表 2.5

ラテンアメリカ・カリブ海地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2004 ~ 2009年度

単位:100万ドル

テーマ 2004 2005 2006 2007 2008 2009
経済管理 111.2 310.4 42.5 54.3 131.8 483.0
環境・天然資源管理 159.1 841.2 454.0 353.0 664.8 3,437.6
金融・民間セクター開発 912.4 729.6 1,518.7 498.9 622.7 1,569.7
人間開発 1,046.7 469.8 502.6 1,022.5 445.5 1,643.8
公共セクター・ガバナンス 672.0 506.2 1,054.2 519.9 943.4 2,180.7
法規 270.9 147.9 108.8 97.5 50.1 1.0
農村開発 249.6 331.7 236.5 415.4 307.5 531.6
社会開発・ジェンダー・参加 268.9 187.9 282.6 175.4 109.2 65.7
社会的保護・リスク管理 926.9 950.4 606.2 419.0 307.0 2,853.4
貿易・統合 364.6 233.4 720.3 300.5 224.8 254.1
都市開発 337.6 457.1 384.1 696.9 853.1 1,010.3
テーマ総額 5,319.8 5,165.7 5,910.5 4,553.3 4,660.0 14,031.0
セクター
農業・漁業・林業 379.6 233.4 291.0 83.4 333.5 1,329.2
教育 218.3 680.0 712.7 369.1 525.3 710.6
エネルギー・鉱業 50.5 212.6 172.8 19.5 266.8 502.3
金融 405.1 530.0 907.3 286.4 249.5 1,921.0
保健・その他の社会サービス 1,558.9 443.4 821.8 649.1 436.7 3,190.5
産業・貿易 428.0 199.9 569.2 236.3 462.0 696.2
情報・通信 14.0 44.7 20.8 0.0 0.0 173.9
法律・司法・行政 1,521.3 1,776.0 1,278.8 1,187.8 851.4 3,137.4
運輸 675.7 556.4 785.4 1,223.9 1,083.4 204.3
上下水道・治水 68.4 489.5 350.7 497.8 451.3 2,165.7
セクター総額 5,319.8 5,165.7 5,910.5 4,553.3 4,660.0 14,031.0
うち、IBRD 4,981.6 4,904.4 5,654.1 4,353.3 4,353.5 13,828.5
IDA 338.2 261.3 256.4 200.0 306.5 202.5

注:2005年度からは、保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。

注目すべき成果現場の声

奨励金による児童および家族の健康・教育改善

ソコロ・パルマは、メキシコ東部の州プエブラにある小さな家に住んでいます。ささやかな家ですが、家族は壮大な野心を持っています。5人の子供は学齢期で、全員が学校に通っており、ソコロ自身も夜間クラスに通い始めたのです。

メキシコにいる他の何百万人もの低所得者と同様、パルマ一家もOportunidades の支援を受けています。これは、世銀の資金により、子供たちを学校に通わせ、適切な保健/栄養ケアを受けられるようにすることを条件に、貧困家庭に対し資金援助と基礎的サービスを提供するプログラムです。2009年度に世銀が同プログラムに行った追加資金は、メキシコ人口のほぼ4分の1に当たる2500万人に対する援助を保証するものです。

世銀は2009年度中、ラテンアメリカの他の場所でも、条件付現金給付プログラムの支援のために25億ドルを供給しました。現在、ブラジルのBolsa Família 、コロンビアのFamilias en Acción 、および地域全体での条件付現金給付(CCT)プログラムを合わせると、約1億人の人々が恩恵にあずかっています。

世銀の報告書「条件付現金給付:現在および将来における貧困の削減(Conditional Cash Transfers: Reducing Present and Future Poverty )」によると、CCTプログラムは極めて高い加入率と低い脱退率を示し、子供の健康状態を改善しました。この結果は極めて説得力を持つものであったため、世銀は2009年度、バングラデシュ、コロンビア、ケニア、マケドニア、パキスタンおよびフィリピンの6か国を、新たに同プログラム支援の対象国リストに加えました。

ラテンアメリカ・カリブ海地域の概要

総人口:6億人
人口増加率:1.1%
平均寿命:73歳
乳幼児死亡率(出生1000件当たり):22件
若い女性の識字率:97%
HIV感染者・エイズ患者数:190万人
2008年の一人当たり国民総所得(GNI):6,780ドル
一人当たりGDP指数(1998=100)121

注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生1000件当たり)、若い女性の識字率、HIV感染者・エイズ患者数は2007年、その他の指標は2008年の「世界開発指標」データベース、HIV感染者・エイズのデータは国連・世界保健機関「2008年エイズ流行に関する報告書」の数字です。

2009年度の
新規融資承認額
2009年度の
融資実行額
IBRD:138億2900万ドル
IDA:2億200万ドル
IBRD:78億6400万ドル
IDA:1億8000万ドル

2009年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ:260億ドル