ヨーロッパ・中央アジア地域

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WB_AR2009_Map Europa Central Asia

  • アルバニア
  • アルメニア
  • アゼルバイジャン
  • ベラルーシ
  • ボスニア・ヘルツェゴビナ
  • ブルガリア
  • クロアチア
  • グルジア
  • カザフスタン
  • キルギス共和国
  • コソボ
  • マケドニア
  • 旧ユーゴスラビア共和国
  • モルドバ
  • モンテネグロ
  • ポーランド
  • ルーマニア
  • ロシア連邦
  • セルビア
  • スロバキア共和国*
  • タジキスタン
  • トルコ
  • トルクメニスタン
  • ウクライナ
  • ウズベキスタン

*スロバキア共和国は2008年11月に世銀の融資対象国を卒業。

世界金融・経済危機は、ヨーロッパ・中央アジア地域に大きな打撃を与えました。2007年に7.1%だった当地域の成長率は、2008年に4.2%へと下落し、2009年には3.0%まで続落するとみられています。

1999年以降、当地域の人口4億8000万人のうち9000万人近く(人口の約18%)が貧困と脆弱な立場から脱却しましたが、金融危機の影響で、この成果が危機にさらされています。当地域の住民のほぼ40%が未だ貧困または脆弱な状態にあると考えられており、今後この数字は増加が予想されます。2009年末までには、新たに2500万人が貧困層や弱者層に加わると考えられています。2010年末には、さらに1000万人がこのカテゴリーに入る可能性があります。

1990年以降の大幅な経済成長をもたらしたグローバリゼーションの力そのものが、今はヨーロッパ・中央アジア地域の脆弱性および世界の他地域への依存度を露呈しています。比較的多額の経常赤字、対外債務残高の増加、極めて急速な信用拡大、および外貨借入を資金源とした消費ブームが、ヨーロッパ・中央アジアおよびバルト諸国、そして一部の独立国会共同体(CIS)諸国において脆弱性を生み出し、そのうち何か国かは深刻な危機にさらされています。一次産品価格の急落が、ロシア連邦やカザフスタンをはじめとする地域東部の経済大国の成長を阻み、それほど豊かでないCIS諸国には極めて大きな打撃となりました。中央・東ヨーロッパの一部では、ユーロ圏への早期統合への期待感が、慢心と改革努力の緩みに繋がりました。

危機の影響は、金融市場、製品市場および労働市場という3つの主要な伝達メカニズムを通じて実感されています。金融セクターでは、多額の経常赤字を抱える国々の借り換えリスクが、ひどく不安定な状況を生み出しています。工業生産は低下し、一部の国では、2008年実績に対する2009年初頭の下落率は2桁台に上りました。輸出需要も大きく落ち込みました。失業率は上昇しており、一部の国では月1%という空前のペースで失業者が増加し、近い将来失業率が2桁台に達すると予想される国もあります。国外からの送金の急激な落ち込みは数百万人を貧困に陥れると予想されており、特にアルバニア、アルメニア、モルドバおよびタジキスタンが大きな影響を受けています。

世銀の支援

世銀は2009年度、ヨーロッパ・中央アジアに対し94億ドルを承認しました。これはIBRDの貸出90億ドルとIDA融資承認額3億8400万ドル(うち3200万ドルは贈与)からなり、合計49件のプロジェクトが対象です。世銀は資金援助に加え、借入国に対し、国別および地域全体の経済最新情報を含む調査および分析を継続的に提供しました。

金融セクターの安定化

世銀は、域内のほぼ半数の国々における改革の財政支援、銀行セクターの診断、ならびに借入国の再編および資本増強といった支援を通じ、金融セクターの安定化を図っています。欧州復興開発銀行、欧州投資銀行および世銀グループは合同イニシアティブとして、域内の世界の銀行セクター支援および世界経済危機の打撃を受けた企業への貸付の資金として、最大310億ドルを提供することを約束しました。この支援には、エクイティ・ファイナンスおよびデット・ファイナンス、与信枠および政治リスク保険などが含まれます。

緊急援助の提供

金融危機に対処するための緊急の支援要請に応え、理事会は、ウクライナへの金融仲介融資による財政支援を承認し、ハンガリー、ラトビアなど、他のいくつもの国々における貸付業務を準備しています。また、理事会はエネルギー危機に対処するため、キルギス共和国に対し、エネルギーへのアクセス改善および冬季の火力発電と地域暖房システムの信頼性を向上する、政府のエネルギー危機緩和行動計画の実施を支援するため、1100万ドルの緊急エネルギー援助プロジェクトを承認しました。

雇用維持およびインフラ整備

ヨーロッパ・中央アジアにおける雇用創出を支援するため、世銀は、同地域全土にわたり労働集約型のインフラ・プロジェクトに資金を提供しています。1億2250万ドルを提供したクロアチアにおける第二次リエカ・ゲートウェイ・プロジェクトは、官民のパートナーシップにより、リエカ港を拡大する交通需要に対応させることを目的としています。グルジアでは、7000万ドルの追加融資により、周辺道路や地方道路の拡張および再建が可能になると共に、雇用が創出されます。また、世銀は2009年度、グルジアの地方および市レベルのインフラ・プロジェクトに対し、4000万ドルの拠出を承認しました。ベラルーシへの6000万ドルの融資は、約170万人の消費者に対する上下水道サービスの品質、効率性および持続性向上を支援し、アルメニアにおける2500万ドルの主要幹線道路改修プロジェクトは、道路網の特定部分を改修し、危機の影響が深刻だったこの国で切望されている臨時雇用を創出します。

ビジネス環境の改善

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当地域の危機後に向けた準備に対する支援の一環として、世銀は、ビジネス・投資環境の改善を図っている国々を支援しています。既にかなりの成果が見られており、ヨーロッパ・中央アジアは5年連続でビジネス規制改革が世界で最も進んだ地域となっています。2007年6月から2008年6月までに、域内25か国のうち23か国で、ビジネス環境を改善する62の改革が実施されました。規制改革を最も進めた10か国のうち4か国が、ヨーロッパ・中央アジアにありました。世界で最も規制改革を進めた国としてアゼルバイジャンは、ビジネス環境の世界ランキングにおいて97位から33位に躍進しました。規制改革で第2位だったアルバニアは、4つの分野で改革を実施し、世界ランキングを135位から86位に上げました。

このセクターへ資源を投入しようとする国々を支援するため、理事会は2009年度、中小企業の資金調達アクセスを拡大するため、トルコに対し2億ドル、アルメニアに対し5000万ドルの追加拠出を承認しました。また、理事会は、ビジネス環境改善に向けた取り組みを含むセルビア政府の構造改革プログラムを支援するため、5000万ドルの活動を承認しました。2009年度、タジキスタンに対し承認された2000万ドルの第三次プログラム的開発政策グラントは、民間セクター開発環境、公共セクター全般の機能、および主要な公共サービスの提供を改善する政府の取り組みを支援しています。

社会セクターの支援

政府予算が圧縮されたことで、ヨーロッパ・中央アジア諸国の政府は、貧困層や弱者層を直接支援する社会プログラムへの支出削減圧力にさらされることになります。社会的支出の傾向やパターンを観察し、危機においても保護されるべき保健、教育および社会的保護プログラムへの必要不可欠な支出を見極めるという取り組みが進められています。世銀は、労働市場のモニタリング、社会的セーフティネットのモニタリングおよび迅速な調査により、危機が当地域の人々にもたらした影響を積極的に追跡しています。現在進行中の分析では、社会的保護および人々の暮らしに対する危機の影響、年金への影響、セーフティネットでどこまで危機に対応できるか、そして世銀の役割について検証を行っています。

制度構造改革およびオープンな貿易政策の促進

世銀は、ヨーロッパ・中央アジア諸国における制度構造改革の導入を、継続的に支援しています。「Anticorruption in Transition 3(移行期 の腐敗防止3)」と題する書物および最新のビジネス環境・企業業績調査は、公共セクター改革、法制度・司法改革および腐敗防止の分野で課題が残るものの、大多数の国々において、特に法的枠組みの分野で着実な改善がなされていることを示しています。当地域における世銀の経済・セクター分析は、多くの国で今も活発ではない国際貿易を拡大するためには規制改正が必要であることに着目しています。借入国の経済危機対応策への支援に加え、世銀は、それらの国が危機終結後に備えるための手助けとして、金融セクター改革、社会的保護の拡大、ガバナンスの改善などを支援しています。

また、世銀は、アルメニア、キルギス共和国、モルドバおよびタジキスタンにおいて、セーフティネット、栄養、社会基金などの活動に資金を提供することで、危機の最中に人々を保護する取り組みを直接支援し、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国では、条件付き現金給付を支援しています。

地球規模および地域的な長期的課題への対処

当地域は、2009年度に「Adapting to Climate Change in Europe and Central Asia(ヨーロッパ・中央アジアにおける気候変動への適応)」という報告書を発表し、気候変動の影響が予想よりも深刻なものとなると警告しています。これは、環境が適切に管理されず、域内の大半のインフラが不備という長年にわたる負の遺産のため、域内諸国の適応能力が低いことによるものです。世銀は、試験的適応、クリーン・テクノロジーおよび気候変動適応プロジェクトへの投資を通じ、各国の気候変動への適応を支援しています。世銀はまた、当地域が直面する人口構造面の変化への対策も支援しています (http://www.worldbank.org/eca 参照)。

図2.7
ヨーロッパ・中央アジア地域
IBRDとIDAのテーマ別融資|2009年度
総融資額94億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Europe and Central Asia IBRD and IDA Lending by Theme Fiscal 2009

図2.8
ヨーロッパ・中央アジア地域
IBRDとIDAのセクター別融資|2009年度
総融資額94億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

Europe and Central Asia IBRD and IDA Lending by Sector Fiscal 2009

表 2.4

ヨーロッパ・中央アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2004 ~ 2009年度

単位:100万ドル

テーマ 2004 2005 2006 2007 2008 2009
経済管理 242.0 17.4 4.6 5.7 2.6 692.5
環境・天然資源管理 309.4 394.4 148.8 397.6 461.4 452.0
金融・民間セクター開発 950.2 933.9 1,461.1 823.6 1,295.9 2,396.9
人間開発 297.1 539.4 360.3 258.3 228.8 1,286.1
公共セクター・ガバナンス 895.1 272.3 589.1 328.8 515.0 850.9
法規 132.3 66.8 401.6 230.4 170.6 1.4
農村開発 117.4 161.5 238.5 150.1 260.2 180.2
社会開発・ジェンダー・参加 33.9 246.6 95.1 23.2 24.4 17.5
社会的保護・リスク管理 305.3 668.8 335.9 346.7 125.5 890.3
貿易・統合 182.6 424.4 226.6 539.5 497.9 2,359.3
都市開発 93.6 368.0 183.0 658.2 588.8 235.8
テーマ総額 3,559.1 4,093.5 4,044.6 3,762.2 4,171.1 9,362.8
セクター
農業・漁業・林業 168.6 107.0 117.9 53.4 126.3 9.0
教育 164.0 263.8 126.7 81.9 67.4 357.1
エネルギー・鉱業 352.2 657.9 1,108.3 337.6 546.7 1,547.1
金融 836.9 259.1 374.5 353.5 311.5 621.0
保健・その他の社会サービス 244.3 484.9 339.9 192.9 215.9 630.9
産業・貿易 126.3 253.5 274.8 395.5 499.0 699.5
情報・通信 7.0 10.9 0.0 0.0 23.6 0.0
法律・司法・行政 1,176.8 1,160.6 1,271.7 812.6 919.0 2,346.9
運輸 321.2 557.9 416.7 712.3 893.7 2,912.2
上下水道・治水 162.0 337.9 14.2 822.4 568.0 239.1
セクター総額 3,559.1 4,093.5 4,044.6 3,762.2 4,171.1 9,362.8
うち、IBRD 3,012.9 3,588.6 3,531.9 3,340.1 3,714.3 8,978.4
IDA 546.2 504.9 512.8 422.1 456.8 384.4

注:2005年度からは、保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。

注目すべき成果現場の声

小さな村の壮大な構想

モルドバの小さな村カルファは、以前にも増して小さくなりつつあります。国外に出稼ぎに行って本国に送金しようと親が家族を残して出て行くからです。村の学校に通う子供の半数以上は、両親のいずれかが外国に住んでおり、両親共に家を遠く離れて働いている家庭も数多くあります。

残された者たちは協力しています。住民が村の小学校を援助し、現在は生徒用のコンピュータが設置され、親たちが様々な活動を支援しています。 世銀が拠出する社会投資基金(SIF)に援助され、村では、雨漏りする校舎の屋根を修繕し、誰かが一日中燃料を補給して火を絶やさないようにしなくても学校に暖房が通るよう、ガスボイラーを設置しました。

生徒が学校へ辿り着くまでに泥まみれになるほど劣悪な状態だった町の主要道路は再舗装され、改修部分が水に流されないよう、排水溝が設置されました。

カルファ市民は、こうしたプロジェクト資金の30%を負担し、残りはSIFからグラントとして支給されました。この基金は、コミュニティが選び、コミュニティ・メンバーで構成される評議会によって運営されるプロジェクトを支援しています。 カルファのある老夫婦(写真参照)は今年、50回目の結婚記念日を迎えました。ガスの供給を町でほかの誰よりも先に受けた二人が、お祝い気分になるのも不思議ではありません。「SIFプロジェクトは、私たちの労働の50%を解消してくれた。もう薪を割る必要はない」と、夫のイオン・クラフチョフ(71歳)は言います。「以前はお湯もなかったのに、今は風呂場があり、シャワーを浴びることも出来るんだ!やっと余生を楽しむ時間が出来たよ」

ヨーロッパ・中央アジア地域の概要

総人口:4億人
人口増加率:0.3%
平均寿命:70歳
乳幼児死亡率(出生1000件当たり):21件
若い女性の識字率:99%
HIV感染者・エイズ患者数:160万人
2008年の一人当たり国民総所得(GNI):7,418ドル
一人当たりGDP指数(1998=100)170

注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生1000件当たり)、若い女性の識字率、HIV感染者・エイズ患者数は2007年、その他の指標は2008年の「世界開発指標」データベース、HIV感染者・エイズのデータは国連・世界保健機関「2008年エイズ流行に関する報告書」の数字です。

2009年度の
新規融資承認額
2009年度の
融資実行額
IBRD:89億7800万ドル
IDA:3億8400万ドル
IBRD:48億8700万ドル
IDA:4億9300万ドル

2009年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ:210億ドル