東アジア・大洋州地域

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  • パラオ
  • パプアニューギニア
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  • サモア
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  • タイ
  • 東ティモール
  • トンガ
  • バヌアツ
  • ベトナム

世界金融危機の結果、東アジア・大洋州地域の低・中所得国における2009年の成長率は急落し、2001年以来初の下落となりました。2009年における当地域の実質経済成長率はわずか5.3%と予測されています(2008年は8.0%、2007年は11.4%)。この成長率は他の地域と比較すればまだ好調な水準ではあるものの、東アジア・大洋州地域の人々(特に最も貧しく弱い立場の人々)は、数世代ぶりの最悪の世界経済・金融危機により、深刻な影響を受けています。当地域における見通しは、他の途上地域に比べればましといえるかもしれませんが、再び高度成長を達成するまでには時間がかかり、雇用創出、生活水準および貧困削減に悪影響を与えると懸念されています。

当地域の中所得国(中国、インドネシア、フィリピンおよびタイ)は、1997-98年のアジア金融危機後に実施した構造改革に助けられ、当初の衝撃には持ちこたえました。しかし現在、世界的な需要衰退および輸出・工業生産の急激な縮小が当地域のすべての国々に影響を及ぼしています。特に深刻なのは、電化製品(フィリピン)、一次産品(インドネシア、ラオス人民民主共和国、モンゴル、パプアニューギニアおよび東ティモール)、衣料(カンボジアおよび太平洋諸島)の製造および輸出に大きく依存する国々です。

雇用が縮小し国外からの送金が減少する中、域内の貧困削減のペースは低下しています。本来ならば貧困を脱け出していたはずの1000万人以上の人々が、金融危機の結果、未だ貧困ライン以下に留まるとみられています。

東アジア各国の政府は、危機に素早く対処しました。すべての中所得国が景気刺激策を講じ、低所得国は開発パートナーからの追加支援を要請しました。多くの国々が、早い段階で社会的保護を強化しました。中国は、数百万の農村部住民を含む7400万人の貧困層に対し一時金を支給し、貧困層が医療を受けやすくなるよう、大規模な医療制度改革を導入しました。インドネシアは、貧困層を対象とした現金援助プログラムを強化し、フィリピンは条件付現金給付プログラムを導入しました。

世銀の支援

世界金融危機の影響に対処するため、世銀は2009年度に、東アジア・大洋州地域における戦略を修正しました。長期的優先課題は変わらない一方、短期的には、各国政府による景気刺激策や主要な社会・インフラ投資の維持を支援するなど、危機の社会・経済的影響に対応することに主眼が置かれました。また、世銀は、危機の社会・経済面における潜在的影響に関する詳細な分析を提供する形で、その専門的分析力を役立てました。

世銀は2009年度、東アジア・大洋州地域の40件の開発プロジェクトに対し、82億ドルを承認しました。これは、2008年度の拠出額45億ドルのほぼ2倍にあたります。その内訳は、IBRDの貸出69億ドルおよびIDAの承認12億ドル(うち3640万ドルは贈与)です。

世界的危機への対応

東アジア・大洋州地域の多くの国々は、2008年の原油・食糧価格のはなはだしい高騰から立ち直りつつあったまさにそのとき、世界金融危機に見舞われました。世銀は2009年度、これらの国々が両方の危機を乗り切ることができるよう、全域で支援を拡大しました。インドネシアで、世銀は地域インフラ・プロジェクト、学校施設の改修、貧困家庭が子供を学校に行かせるための直接援助などコミュニティ・レベルの活動に対し、4億1500万ドルの追加ブロック・グラントを拠出し、都市および農村部における貧困層の支援を行っています。財政支援は、インドネシアが10年にわたり全国コミュニティ・エンパワーメント・プログラムで成果を上げてきたことを踏まえたものです。

世銀はまた、「学校運営支援-透明性と説明責任のための知識向上」と呼ばれる革新的な学校グラント・プログラムを支援するため、6億ドルの融資を承認しました。このプログラムは、7歳から15歳までのすべての児童が質の高い教育を受けられるようにすることと、コミュニティによる学校運営への参加拡大を目指しています。このプログラムはまた、金融危機により失業した家庭への直接支援を拡大する手段としても使われています。

フィリピンでは、食糧価格の高騰により生じた緊急事態への対処を支援するため、2億ドルの開発政策融資が実施されています。この融資は、新たな条件付現金給付プログラムなど、貧困層や弱い立場の家庭に対する社会的保護およびセーフティネットを強化するための施策に充てられます。

ラオス人民民主共和国では、300万ドルの世界食糧危機対応プログラム・グラントにより、小規模農家のコメ生産を拡大することで、季節的な、または自然災害による食糧不足を緩和する支援を行っています。また、世銀は、母子保健サービスの利用を促進するために設計された条件付現金給付制度を試験運用しています。ベトナムでは、インフラ投資を重視する、政府の景気刺激策に必要な資金調達を支援しています。

一次産品価格急落の打撃が大きかったモンゴルでは、政府により、危機の影響を緩和し、鉱物資源に立脚した経済の景気循環の影響を低減させるための改革プログラムが導入されました。世銀および他の開発パートナーは、一連の開発政策融資計画などを通じて政府の政策改革アジェンダを支援しています。

ソロモン諸島での職員倍増と事務所新設をはじめ、大洋州地域では世銀業務が大幅に拡張されており、大洋州の島嶼国、パプアニューギニアおよび東ティモールの需要に応えるのに役立っています。こうした国々は、若年層を対象とした雇用創出プログラムの計画立案において世銀の技術協力を要望しています。

より大規模な支援として、世銀は、アジア開発銀行、オーストラリアおよび日本政府と共に、インドネシアの経済状態がさらに悪化した場合に備え、同国に対する機動的な財政支援プログラムの実施を図っています。この公的支出制度の中で最も大きな割合を占めているのは、世銀による20億ドルの支援です。インドネシア政府は、必要に応じて重要な社会・インフラ・プログラムの資金を賄うためにこの基金を利用することができ、これによって、不況下にあっても不可欠な公共サービスや投資を継続することが可能になります。

自然災害への対応

7万人近い犠牲者を出した2008年5月の四川省文川地震からちょうど1カ月後、中国政府と世銀は、復興の国際的グッド・プラクティスに関する国際ワークショップを開催しました。これらの取り組みが土台となって、2009年度に7億1000万ドルの緊急復旧融資が理事会で承認されました。この融資は、四川・甘粛省における被災地のインフラ新設や、保健・教育施設の再建に充てられています。

2008年5月にミャンマーで14万6000人の犠牲者を出したサイクロン・ナルギスは、約80万世帯を破壊・損傷し、国内の農地を広範囲にわたって荒廃させました。2009年度、世銀は国連および二国間ドナーと協力し、東南アジア諸国連合(ASEAN)が、将来の自然災害および人道危機への対応能力を向上させるよう支援しました。

気候変動の課題への取り組み

東アジア・大洋州地域全域で、二酸化炭素排出削減および気候変動の影響軽減という二重の課題に対する画期的な取り組みが続けられています。中国では、1億2000万ドルの、環境に配慮した農業プロジェクトにより、農家が生産システムにバイオガスを取り入れ、カーボン・クレジットを家庭に還流させる仕組みを支援しています。このプロジェクトから得られた教訓は、中国政府による農村バイオガス・プログラムの指針となるでしょう。また、1970万ドルの地球環境ファシリティ・グラントが、山西省、山東省および広東省にて、低効率の石炭火力発電施設の閉鎖を支援しています。ベトナムでは、2億200万ドルのIDA融資が、再生可能エネルギー源を使った発電量を増加させるために利用されています。

フィリピンでは、世銀はクリーン開発メカニズムを活用し、風力発電所等のエネルギー企業などが、温室効果ガス排出削減市場から恩恵を受けられるよう支援しています。世銀は、自ら運営する様々なカーボン・ファイナンス制度を通じ、企業や公共機関から認証排出削減量を買い取ることによって、フィリピンにおける温室効果ガス排出削減を支援しました。

当地域の各都市が、自らの気候変動に対する脆弱性を認識し易くするため、世銀は、国連の国際防災戦略および防災グローバル・ファシリティに参加し、「気候変動に屈しない都市」という入門書を作成しました。この地方政府向け「ハウツー」本は、地方政府が自らの脆弱性を認識し、自然災害や気候事象の影響を緩和する計画を策定するのに役立ちます。

パートナーシップ構築

世銀は、自らの知識基盤を拡げ、東アジア・大洋州全域で開発の成果を上げるため、パートナーシップの構築を特に重視しています。2009年に締結された南カリフォルニア大学(USC)とのパートナーシップは、USCの都市・社会計画に関する専門性と世銀の持続可能な開発に関するスキルを組み合わせるものです。新たな世銀・シンガポール・アーバン・ハブ計画は、途上国が直面する主要な都市問題に対する現実的な解決策を助言・支援を提供し、双方の機関の専門性を活かして都市問題に対し実効性のある解決策を見いだそうというものです。

そして、バンコクを拠点とした世銀の新たなガバナンス・ハブは、2009年1月に活動を開始し、ガバナンスおよび腐敗防止に関する課題への最も効果的な取り組み方を模索するために、地域の学術機関、シビルソサエティ組織および政府に働きかけています。このハブは、その活動を強化すると共に、当地域で生じている変化をより良く理解するため、世銀を、有力な研究機関、専門家組織およびシビルソサエティ組織と結びつけるのに役立っています(http://www.worldbank.org/eap参照)。

図2.3
東アジア・大洋州地域
IBRDとIDAのテーマ別融資|2009年度
総融資額82億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

EastAsia IBRD and IDA Lending by Theme Fiscal 2009

図2.4
東アジア・大洋州地域
IBRDとIDAのセクター別融資|2009年度
総融資額82億ドルに占める割合 [拡大図はこちら]

EastAsia IBRD and IDA Lending by Sector Fiscal 2009

表 2.2

東アジア・大洋州地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2004 ~ 2009年度

単位:100万ドル

テーマ 2004 2005 2006 2007 2008 2009
経済管理 0.0 87.0 78.7 82.5 0.0 784.1
環境・天然資源管理 432.2 446.9 396.4 565.0 746.0 550.0
金融・民間セクター開発 553.9 340.6 720.7 999.1 1,132.9 1,927.5
人間開発 164.6 184.6 543.7 213.4 229.0 818.7
公共セクター・ガバナンス 299.0 344.5 385.9 705.4 644.4 1,568.1
法規 67.3 45.8 13.4 0.0 23.5 0.0
農村開発 400.9 484.1 465.7 608.2 555.4 717.8
社会開発・ジェンダー・参加 167.2 241.1 83.3 189.9 197.1 178.0
社会的保護・リスク管理 5.5 88.7 144.9 43.8 99.3 888.2
貿易・統合 82.9 126.5 112.1 233.0 177.3 175.9
都市開発 399.2 493.5 456.9 403.7 663.2 544.4
テーマ総額 2,572.7 2,883.3 3,401.6 4,043.9 4,468.1 8,152.7
セクター
農業・漁業・林業 290.4 207.9 373.3 268.6 112.8 200.8
教育 118.6 228.0 287.9 125.3 234.3 941.3
エネルギー・鉱業 67.2 359.1 425.2 118.5 666.1 946.0
金融 49.0 213.1 197.6 230.1 263.0 1,009.4
保健・その他の社会サービス 84.3 204.3 160.6 132.7 213.0 581.5
産業・貿易 78.7 159.1 29.3 102.0 189.5 753.6
情報・通信 0.0 5.0 5.3 0.0 10.0 11.0
法律・司法・行政 257.5 436.6 693.6 887.7 888.8 1,474.2
運輸 1,209.9 306.7 652.3 1,554.7 1,531.7 1,204.9
上下水道・治水 417.1 763.7 576.5 624.3 359.0 1,030.2
セクター総額 2,572.7 2,883.3 3,401.6 4,043.9 4,468.1 8,152.7
うち、IBRD 1,665.5 1,809.8 2,344.3 2,806.6 2,676.7 6,905.4
IDA 907.2 1,073.6 1,057.2 1,237.4 1,791.4 1,247.4

注:2005年度からは、保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。

注目すべき成果現場の声

電灯を点ける-フィリピンの地方州における機会創出

フィリピン・ボホル州農村部の小さな町に住む、コスメ・デュベルテ(45歳)の暮らしは、2009年初頭、初めて蛍光灯を点けた瞬間から変わり始めました(写真参照)。それは、世銀の資金援助を受けたコミュニティ主導プロジェクトのおかげで、辺鄙な山間部にある彼の村にもようやく電気が通った瞬間でした。

「今では子供たちも夜に宿題が出来るようになり、成績が上がった」と、7人の子供を持つ彼は誇らしげに言いました。彼の妻は、村や町の中心地で売るためのキャッサバのケーキとアイスキャンデーを作るというささやかな商売を始めました。農民兼大工であった彼自身も企業家精神を持っており、家具製作ビジネスの注文受付を始めました。「電気があれば、夜も働くことができる」と言う彼は、仕事用の電動工具を買うために少しずつお金を貯めていると付け加えました。

コスメは、近くに立つ、村に電気を運んでくるコンクリートの電柱を指差し、これを人の力だけで山の上まで引っぱり上げて設置するのに、コミュニティの24人の人手が必要だったと説明しました。彼らは労働を通じて、この電化プロジェクトに対して貢献したのであり、プロジェクト資金の大部分は、フィリピン政府が実施し世銀が資金を拠出したコミュニティ主導型開発プログラムであるKALAHI-CIDSSからの贈与によるものでした。 KALAHI とは、フィリピンの言葉で「貧困と闘うために腕を組む」という意味のKapitbisig Laban Sa Kahirapanの頭文字を取ったものです。CIDSSは、Comprehensive and Integrated Delivery of Social Services(社会サービスの総合的・統合的提供)の頭文字です。このプロジェクトは、地方区のガバナンスに対する地域コミュニティの参画を強化し、貧困削減のための開発活動を設計、実施、管理する能力を地方レベルで育成することを目的としています。

KALAHI-CIDSS は、村民に対し、プロジェクト計画、技術設計および資金管理・調達のトレーニングを提供し、地域レベルで将来のリーダー達を育成するものです。このプロジェクトは、村民に対し、透明性を重視しつつ、情報へのアクセス、意見の表明および地域ガバナンスに影響を及ぼす機会を計画的に提供します。資金の使途は公開の会合で公表され、コミュニティ・プロジェクトに関する情報は、コミュニティの掲示板に掲載されます。

東アジア・大洋州地域の概要

総人口:19億人
人口増加率:0.8%
平均寿命:72歳
乳幼児死亡率(出生1000件当たり):22件
若い女性の識字率:98%
HIV感染者・エイズ患者数:240万人
2008年の一人当たり国民総所得(GNI):2,515ドル
一人当たりGDP指数(1998=100)207

注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生1000件当たり)、若い女性の識字率、HIV感染者・エイズ患者数は2007年、その他の指標は2008年の「世界開発指標」データベース、HIV感染者・エイズのデータは国連・世界保健機関「2008年エイズ流行に関する報告書」の数字です。

2009年度の
新規融資承認額
2009年度の
融資実行額
IBRD:69億500万ドル
IDA:12億4700万ドル
IBRD:32億7500万ドル
IDA:12億5400万ドル

2009年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ:260億ドル