貿易の促進と金融・民間セクターの開発

貿易

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世銀は、迅速な対応が特長の貿易促進ファシリティを立ち上げました。これは、借入国が貿易コストを削減し、国境を越える財・サービスの移動を迅速、安価、かつ予想通りに行う能力を強化すると共に、インフラ、制度、政策、規制の近代化によって貿易促進システムに即時に直接的改善をもたらす活動への融資を意図したものです。貿易コストの削減は、借入国がこの経済危機の中にあっても、経済発展および貧困削減の目標を実現するための重大な機会をもたらします。

14の途上国で輸出業者、輸入業者、貿易金融を手がける地元銀行を対象とした調査の結果、貿易金融のコストが著しく増加し、輸出金融の供給が減少していることが明らかになりました。世銀は、IFCの世界貿易金融プログラム(GTFP)および世界貿易流動性プログラム(GTLP)を通じて、貿易金融関係のコンポーネント40億ドルを含む業務プログラムを実施しています。官民のパートナーと共に、GTLPにより3年間で最大500億ドルの短期貿易金融の拠出が予想されています(http://www.worldbank.org/trade参照)。

金融・民間セクター開発

金融・民間セクター開発に関する世銀の2009年度の活動では、金融危機への対応管理、金融安定性の維持、金融アクセス、とりわけ零細・中小企業や貧困層の金融アクセスの確保、経済回復と成長のための条件づくりといった分野における各国政府への支援に重点が置かれました。これは、危機への備え、金融セクター改革、投資環境改革という3つのメカニズムを通じて行われました。

危機への備えと分析 世銀は2009年度、危機的状況にある金融システムの主要な特徴や行動を再現するための、各国によるシミュレーション実施を支援しました。このプロセスは、当局に対し、潜在的危機を適切に管理し対応を迅速化するための態勢を整えさせることを意図したものです。これに加え、貧困層支援協議グループ(CGAP)が、全世界でのマイクロファイナンスの実績を追跡した一連の分析を発表しました。また、責任ある融資のためのキャンペーンの一環として、CGAPは投資家がクライアント保護原則を実施に移すのを支援しま した(http://www.cgap.org参照)。

金融セクター改革 世銀は、2009年度に数多くの国の政府に対し、規制改革の策定に関して助言を提供しました。低所得国および中所得国を対象にIMFと共同で実施した金融セクター評価プログラム(FSAP)は、金融システムの脆弱性と開発課題を理解するための主たる診断手段として、引き続き重要な役割を果たすでしょう。世銀は過去10年間 に120か国以上でFSAPおよびFSAPアップデートに関わり、金融セクター改革の分析基盤づくりや最近の危機関係の対政府融資の一部に貢献しています。

世銀は、50か国以上で基本的な決済サービスの安定性強化とアクセス促進を支援しています。IFCと共同して50か国以上で信用調査局の展開を促進しており、これまでに、約190億ドルの融資を支援している13の信用調査局の設立もしくは改善を助けたほか、9か国では担保付取引および担保登録のプロジェクトに取り組んでいます。そうしたプロジェクトのひとつが中国では2009年6月に完了し、売掛債権を用いた3500億ドル以上の資金調達を支援しました。

世銀の世界送金価格データベース(http://remittanceprices.worldbank.org)には、134組の二国間での送金にかかる費用の詳細情報が掲載されています。これらのデータは送金市場の透明性の向上を意図したものであり、適切な消費者保護と共に、送金市場の競争力と安全性を促進し、コスト削減の重要な要因となっています。

投資環境改革 世銀は、活発で競争力のある民間セクターの促進を目的として、ビジネス環境を向上させるための途上国政府による改革を支援しています。 この活動では、取引規制を効率化し、起業やフォーマル・セクターでの雇用機会増大に重点が置かれています。世銀とIFCが毎年発行する「Doing Business(ビジネス環境の現状)」(http://www.doingbusiness.org)では、過去5年間に158か国で約1,000件のそうした改革を追跡しています。たとえば、メキシコでの事業立ち上げに関する改革は、フォーマル・セクターの雇用を3%近く上昇させました。今年から新たに始められたオンラインのジェンダー法ライブラリー(http://www.doingbusiness.org/gender)では、181か国における女性の経済的地位に影響する法律や規制を追跡しています。このデータベースは、法律の比較分析を容易にし、女性の本格的な経済参加を促進する改革に寄与しています。

マルチドナーの外国投資助言サービス(FIAS)は2009年度、約40か国で測定可能な投資環境改善の改革支援に主眼を置き、アフリカ、IDA適格国、紛争経験国など戦略的重点地域での活動を拡大しました。また、世界金融危機を受けて、ビジネス改革の活動を拡大し、融資と担保の枠組み、貿易ロジスティクスを確立し、事業税の簡素化を実現しました。また、債務超過や企業再建のための法的・制度的枠組みの改善で借入国を支援するための新たな破産関連商品の開発も開始しました(http://www.fias.net 参照)。

囲み1.4アクラ後の援助効果向上

2008年9月にガーナで開催された第3回援助効果に係るアクラ・ハイレベル・フォーラムで採択されたアクラ行動計画(AAA)は、パリ宣言の実行においてこれまでに達成された歩みを踏まえたものです。AAAは、途上国の声を反映して、協調よりもさらに先に進んで、借入国のオーナーシップの強化と包括的パートナーシップづくり、成果に対する相互の説明責任の重視、すべての開発パートナーの具体的行動の見極めに着目しています。

途上国もドナーも、パリ宣言およびAAAで誓約された援助効果向上に関して成果を出しています。2008年のモニタリング調査では、途上国では国家開発戦略とそれを監視する堅実な成果枠組みの策定でいくらかの改善が見られ、ドナーの支援もそうした戦略に沿ったものになりつつあるとされています。しかし、多くの分野で、途上国もドナーもAAAでの誓約を果たすためには歩みをさらに加速させる必要があります。

AAAに基づき、世銀は援助効果に係る行動計画を2009年3月に策定しました。重点課題は、借入国のオーナーシップの拡大と国別システムの活用促進、すべての開発パートナーの効果的な関与(特に新しいドナーの関与や脆弱国家への関与)、開発成果や援助の予測可能性についての管理の改善です。

援助効果向上に関する国際的関与の一環として、世銀は現在、開発援助委員会の援助効果作業部会およびその執行委員会で共同副委員長を務めています。世銀は、2011年に韓国で開催予定の第4回援助効果に係るアクラ・ハイレベル・フォーラムの議題決定で中心的な役割を果たすこととなるこの作業部会に対し、重要な技術情報も提供しています。

囲み1.5アラブ世界イニシアティブを通じた開発と機会の促進

アラブ世界イニシアティブ(AWI)は、パートナーシップの強化、成果を上げている地域イニシアティブの拡大、影響力の大きな新規の地域別・国別イニシアティブの試験的実施を通じて、アラブ世界における開発と機会を促進することを目指しています。

国家当局やその他の関係者との広範な協議を経て、AWI は2009年度、数件の新規プログラムを支援し、いくつかの既存プログラムを拡大しました。具体的には、教育実績についての総合指標の開発、ヨルダンを本拠とする「学習および教育リーダーのための地域アカデミー」立ち上げのための技術協力の提供、アラブ世界におけるエネルギー統合の評価の開始、エジプト・アラブ共和国、ヨルダン、チュニジアにおける港湾、空港、ロジスティクスへの投資支援、イラク、ヨルダン、レバノン、シリア・アラブ共和国、ヨルダン川西岸・ガザ地区における国境を越えた往来の円滑化やインフラの評価などです。また、ヨルダンにおける女性雇用の障壁に関する評価を試験的に実施し、食糧価格高騰により深刻な打撃を受けた国々に対する支援を拡大し、イラク、レバノン、モーリタニア、スーダン、ヨルダン川西岸・ガザ地区など脆弱な紛争経験国におけるコミュニティ・プロジェクトへの支援を拡大しました。AWIはさらに、持続可能な資源管理に関する知識交換やアラブのリーダーシップ強化の場として、アラブ水アカデミーに対する支援も提供しました。

AWI の下で、IFCと多数国間投資保証機関(MIGA)は住宅ローン、学生ローン、投資保証の活動規模を拡大し、世界銀行研究所は企業の社会的責任プログラムに着手し、世銀の開発経済担当副総裁室は地域研究能力開発プログラムに着手し、財務局は準備金管理のキャパシティ・ビルディングを拡大しました。